副医院長ブログ
歯周病で失った骨を作る魔法の薬②
前回の続きで別の薬が、最近国内の販売承認が下りたので、紹介します。
歯周組織再生剤「リグロス®歯科用液キット600µg/1200µg」の国内製造販売承認取得について
「リグロス®」は組換え型ヒトbFGF(塩基性線維芽細胞成長因子)※1を有効成分とする世界初の歯周組織再生医薬品です。
歯周炎は主に歯と歯ぐきの間に付着したプラークや歯石によって生じる慢性炎症疾患で、炎症の進行とともに歯を支えている歯槽骨などの歯周組織が徐々に破壊され、これを放置すると最終的には抜歯に至ることがあります。進行した歯周炎では、歯周組織の破壊を阻止するために「フラップ手術※2」と呼ばれる外科手術が実施されることがあります。
科研製薬では、約1,000名のフラップ手術を施行する歯周炎患者を対象とした複数の臨床試験を日本国内で実施しました。その結果、手術時に「リグロス®」を歯槽骨欠損部に塗布することで、歯槽骨の増加など歯周組織再生に対する有効性・安全性が確認され、2015年10月に製造販売承認申請を行っておりました。
当社は、歯周組織再生剤という新たな治療選択肢を提供することで、より多くの患者さんのクオリティ・オブ・ライフの向上に貢献できるものと期待しております。
以上
(参考資料)
※1 bFGF(basic fibroblast growth factor; 塩基性線維芽細胞成長因子)
生体内に存在し、細胞の増殖や分化の調節を行っているタンパク質の一種です。皮膚、血管、骨、軟骨といった様々な組織の形成に強く関与している細胞成長因子の1つであり、種々の細胞の増殖作用及び血管新生作用をもつことから、再生医療の分野で期待されているものの1つです。
「リグロス®」の有効成分であるトラフェルミン(遺伝子組換え)は、遺伝子組換え技術により製造したヒトbFGFであり、2001年6月に褥瘡・皮膚潰瘍治療剤「フィブラスト®スプレー」として科研製薬より発売されています。
※2 フラップ手術(歯肉剥離掻爬(そうは)手術)
歯周炎の病態が進んだときに行う外科的治療法の1つです。メスで歯肉(歯ぐき)を切開することにより、歯肉を歯槽骨から剥離し、歯根および歯槽骨を露出させます。露出後、プラークや歯石、及び炎症によりダメージを受けた歯肉などの組織を取り除いたのちに、剥離した歯肉を元の状態に戻し縫合します。
【承認内容の概要】
販売名:リグロス®歯科用液キット600µg、歯科用液キット1200µg
一般名:トラフェルミン(遺伝子組換え)
効能・効果
歯周炎による歯槽骨の欠損
<効能・効果に関連する使用上の注意>
1. 本剤は、歯周ポケットの深さが 4mm以上、骨欠損の深さが3mm以上の垂直性骨欠損がある場合に使用すること。
2. 本剤は、インプラント治療に関する有効性及び安全性は確立していない。
用法・用量
歯肉剥離掻爬手術時に歯槽骨欠損部を満たす量を塗布する。
<用法・用量に関連する使用上の注意>
本剤の使用にあたっては[臨床成績]の項を参照し適切な量を用いること。
簡単に言うと、もともと褥瘡性潰瘍の治療薬として、使われていた薬がありまして、それ歯周組織を再生するということが、分かりました。
僕の母校の大阪大学歯学部の歯周科でビーグル犬で歯周組織再生の実験を行い、良好な結果が得られていたのが、2003年です。
それから、13年の年月を経て、人に対する効果及び安全性を確認できたようです。
ただ、前の記事でも書いたように、すべての人に使えるわけではありません。
全身状態の良くない人、セルフケアの上手でない方、抜かないといけない位の歯に対してはは適応外となるので、まだ限られた人にのみ使われる薬です。(適応症の方は非常にラッキーと考えてもらっていいと思います)
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